今日 春のにおいがした
タバコを吸うためベランダへ出た瞬間。懐かしさに包まれた
ワタシは『におい』ってモノには予想以上に思い出が詰まってる気がする。
春のにおい。学生時代。雨あがりの少しカビ臭い教室の中。窓を開けると生暖かい空気…風がふくとまだ少し肌寒いような
何年も前にそんな『におい』を誰と感じたんだっけ。
なんてわざとらしく思い出すふりをして…ホントはいまでもハッキリ覚えてるんだ。彼を。
彼と出会ったのは夏の終わりだったけど、彼と別れたのが春だった。
あんなに毎日彼を思って泣いていたのに。今では思い出さない日のほうが多いなんて自分でも不思議だ。
だからこんな気持ちで思い出す日はより鮮明にあの頃を思い出してしまうのかもしれない。
『幸せに出来ない』
それが別れの言葉だった
アタシの髪を彼のタバコクサい指が通り過ぎ、いつもよりキツく抱きしめられ『大丈夫なんだ』と安心した瞬間に告げられた一言だった。