「悠介…?」 悠介はいた。トラックにはね飛ばされ、壁に激突していた。壁は、真っ赤だった。
近寄って、揺さぶってみた。目を開けない。呼吸をしない。体を動かさない…心臓さえも。「なぁ、どうしたんだ? さっきみたいに笑えよ! 今日までのこと話してくれよ! なんで髪そめたんだ? ピアスつけるのって痛いのか? 答えろよ!!…なぁ、なに死んでんだよ…」
弟は即死だった。原因は、雨でスリップしたトラックの激突。
俺は、泣いた。一週間、泣き続けた。弟の遺品としてもらった、ずっと携帯につけていたのであろう、昔買ってあげたキーホルダーを握って。「なんでそこにいたのが弟なんだ? せっかく会ったんだぞ? まだ話もしてなかったのに…いっぱい、聞くハズだったのに…面白かった話、するハズだったのに…」
俺は誓った。弟のキーホルダーを握って。もう、大切な人はなくしたくない。そのために強くなる。
結局、両親はまた再婚した。いろいろと考えた末の答えらしい。俺は責任を感じていた。もし俺が待ち合わせ場所を変えなければ…俺は決めた。弟はなくしてしまったが、両親だけはなくさない。そう、決意した。