明菜はシンジが口を開くのを待った。
丸刈りの頭に愛嬌のある目が時々鋭くなる事を明菜は知っている。
体重100kgを軽く越えるシンジが器用にアイスキャンディの棒を指先でくるくる回しながら話し始めた。
「スーパーカーなんかいらないよ。いいかいアニキ、このレースは速いヤツが勝つんじゃない。頭を使って相手を出し抜く知恵と度胸と少しの運で勝ち上がるレースなんだ」
全員がシンジの話に集中していたが、今一つピンとこないようだった。明菜はシンジの言葉の意味を良く考えたが、やっぱりわかんない。
その時「あっ!」っと何か気付いたようにヒカルが声をあげた。
全員がヒカルを見る。
「公道レースなんだ…!」
ヒカルがつぶやく。
明菜はその言葉の意味が良くわからなかった。
明菜の様子を察したのか、シンジが説明を始める。
「そう、公道だから、あんまりスピード出すと警察に捕まっちゃう。しかも三人一組だからそれなりのスペースのある車の方がいい。期間がどれくらいかかるかも分からない。スタンプラリーってのがミソだ」
なるほどそれならウチのクリーニング店用のミニバンでもいいのか…。明菜は納得した。もぅ…カッコいいんだから…デブのくせに。
「宝くじ買って祈っているよりマシだろう?」シンジは言った。
「確かに現実的に考えて他に手はないわね」
ヒトミが言う。
「店は私と明菜でなんとかするからアンタ達は優勝してきなさい。いいわね?明菜、頑張るわよ」
お母さんはいつも軽くすごいことを言う。慣れっこだもん。
「アッキーナにまっかせなさ〜い!」