『おはよ』
『ん』
アタシ達にとってそれが毎朝お決まりの挨拶だった。
彼はライ。ちょっとグレ気味。アタシはサラ。貧乏苦学生。同じ公立高校の一年。
ライは遅刻&さぼり癖があり、ほっとくと雨の日なんかは学校に出てこない。なのでアタシは早朝バイトのあとに原付でライの家に行き、叩き起こすのだ。
ライはママさんと二人暮らし。ママさんは知り合いの飲み屋を手伝ってるらしく朝から夕方くらいまで寝てる。なので朝から息子の彼女が来ていても全く気にしない。(もともとの性格かもしれないが)
『早くしないとアタシまでギリギリになるよ』
『ん』
はぁー。これは起きる気がないっていうより…。とにかくこんな時は近づかないようにしないと危険だ。
ウッカリ近づいてしまったが最後 腕を引っ張られ布団へ引きづり込まれるのがオチなのだ。
朝から腰が浮いたような状態でしかも遅刻するハメになる。
どーにか布団から離れようとアタシはキッチンを借りてお湯をわかす。
『コーヒーいれたから』
『んん』
あきらめたらしく体を半分持ち上げたライは髪はボサボサ 服は昨日バイトから帰った時のままなのであろうヨレヨレのTシャツとジャージをはいていた。
『ちょっとシャワーぐらい浴びてきなよ』
『ん』
バスルームに向かうライが横を通りすぎる時、ライの汗とタバコとオードトワレの混ざったにおいに『朝からベッドに潜り込むのもキライではないんだよなぁ』なんて思う自分がいた。