『じゃあ、あたしとサトルは、こっちだから。じゃあね、奈央ちゃん♪』
ミズホさんが、にっこり微笑む。
そして、
その横に立つ、サトル君も。
『聖人。今度、氷室のLIVE一緒に行こうゼ。』
『おぅ。チケット、なかなか取れねぇケドな。』
聖人が、タバコに火を点けながら答える。
『あはっ。聖人の氷室は最高だったね♪
声質似てるし。
ねっ♪奈央ちゃん♪』
巻き髪を指先に、くるくる巻き付けながら、
ミズホさんは、ちらりとあたしの方を見た。
『はい。また、みんなでカラオケに行きましょうね!!』
あたしは、恥ずかしいから、聖人の氷室の話題は、サラッと流してしまった。
『うん、行こうねぇ♪奈央ちゃん、いつでもメールちょうだいね♪』
いつでも優しいのは、ミズホさんだと思った。
『奈央ちゃんの歌ってた、一青窈の“ハナミズキ”よかったじゃん。なァ、聖人?!』
たった今、ミズホさんが聖人の歌をほめてくれたかと思うと、
今度は、サトル君があたしの歌をほめてくれた。
ケド、聖人にふるのは、やめてよぉ‥‥サトル君!!
ドキドキドキドキ――
『あ?!あぁ。俺は、川村かおりの“ZOO”がよかったと思うケドな。』
思いもよらず、聖人は、あたしの何気なく歌った曲をほめてくれたんだ。
『ありがとう/////』
顔が熱くなるのが分かった。
『あはっ。赤くなってる。奈央ちゃん可愛いっっ♪
で、サトル。あたしの歌は何がよかった?!』
ミズホさんの質問に、サトル君は一瞬の間をおき、
『HYの曲。』
『‥‥‥‥。』
ミズホさん絶句。
どうしたのかな。
『歌ってねーよッッ!!』
ボカッッ☆☆☆
『痛ってぇぇ〜〜〜!!何すんだよ!!ミズホ!!』
『じゃ〜ね〜。サトル1人で帰りなよッ。奈央ちゃん、聖人、バイバ〜イ♪』
ミズホさんは、怒って、サトル君をおいて先に帰ってしまった。
『ま、待てよ、ミズホ!!』
ダダダダダッッ―ー‐
サトル君は、慌ててミズホさんを追いかけて行った。