「あぁ､淳〜!!凄い､大盛況じゃん!」
茉莉子は､淳に肩を叩かれ､振り向いて､話し始めた｡前に歩いていた麗華は､淳に掛け寄って､胸の辺りを思いっ切り､右手で突く様に押し､少し離れた所まで連れて行った｡
「淳､ちょっと･･･｡」
「おい､麗華､何なんだよ〜､放せって｡」
茉莉子は､私に微笑みながら､いつもの事だと言う表情で呟いた｡
「麗華､早く淳に香里の事を問い詰めたくって､仕方無かったんだろうね?」
「問い詰めるって･･･｡」
「麗華と､私はさぁ･･･､淳も香里も､お互いが､まだ好きなのに､いつまでも､意地張って寄りを戻さないのが､見てられ無い訳｡巧く行って欲しいしね｡」
茉莉子は､私に目を合わさずに､一つｺｸﾘと頷いて言った｡その瞬間､麗華が､前に有る､ﾊﾞｰｽﾍﾟｰｽで受け取ったｼｬﾝﾊﾟﾝｸﾞﾗｽを右手から左手に持ち変え､右手で､淳の胸や腕､顔までも､ﾊﾞﾁﾊﾞﾁと叩いていた｡周りの喧騒で､会話の中身は､聞こえ無いが､やってられない!とばかりに､ｼｬﾝﾊﾟﾝを口に運びながら､淳に叱責して居る様子は､離れた場所からも､手に取る様に伝わった｡淳は､何やら弁解らしき事を言っていて､たまに､頭を抱える様な仕草をしていた｡五分程して､麗華がこちらに戻って来た｡
「香里､後でちゃんと淳と話ししなよね｡ｲﾍﾞﾝﾄ終わったら､声掛けるって｡ほんと､淳って女の気持ち解んないんだから､苛々するわ｡」
「うん･･･｡」
私には､一つ気になる事が有った｡淳の別れたと言う彼女が､このｲﾍﾞﾝﾄに来て居るのか?と言う事だった｡淳も､麗華に突き放され､人混みの中に消えて行った｡また､胸の鼓動は高鳴った｡
「あ､そのさぁ､例の淳の彼女､今日来てるのかなぁ?」
茉莉子は､私の心の中を見たかの様にﾀｲﾐﾝｸﾞ良く､麗華に言った｡
「来てるらしいよ｡」
私は､逃げたい様な､遠くから､どんな女性なのか確認したい様な､自分でも､答えの出ない気持ちになっていた｡
[359] 
[0] 
[0]
