「ちっ!」
ユミナはその攻撃を間一髪で避けると、ロイに向かって剣を振り下ろした。
「やっ!」
ロイはその剣を力で弾き返すと、隙が出来た彼女の肩を切り裂いた。
しかし、その攻撃は浅く、服を肩口から切り裂いた程度で、彼女の肌に傷はつかなかった。
「くぅっ…」
ユミナは顔を歪めて裂けた肩口を手で押さえた。
「あ…」
ロイは裂けた服の間にある赤黒く変色した肌を見て、目を大きく見開いた。
「それは…」
「これ?…決まってるじゃない。父から受けた傷跡よ」
「…っ」
「どうでもいいじゃない、そんな事。…それとも何?この期に及んで同情でもする気?」
ユミナは鼻で笑って、裂けた服をぎゅっと握り絞めた。
「…いいえ、ただ…」
ロイは頭を横に振って、脳裏の奥にある妹の言葉を思い出していた。
「お兄ちゃん、ユミ姉ちゃんね、時々とっても悲しそうな顔をするの」
…そうなのか?
「だからね、ユミ姉ちゃんには一杯笑顔になって欲しいんだ」
ふーん…
「お兄ちゃん…お兄ちゃんはあんまりユミ姉ちゃんの事好きじゃないんでしょ?」
…
「でもね、でもね、ユミ姉ちゃん、笑ったらとっても素敵なんだよ!」
素敵…なのか?