「俺だよ」
その一言で私はやっと気付いた。
その人は中学の同級生で、一安の友達だ。
私とその彼は付き合ったとまではいかないが、お互い好き合ってた事があった。
その彼も滅多に学校には来ていなかった。
「なんで番号知ってんの?」
私は彼に携帯番号を教えていない。
「わかんない」
彼の回答はいつも短い。
というより、素っ気ない。
だから、私はいつも同じ質問を繰り返さない。
「何してんの?」
そんな言葉位しか思いつかなかった様子で彼が聞いてきた。
「電話してきて何してんの?って可笑しくない?電話してんじゃん」
勿論そういう意味じゃないことは、わかってた。ただ少しだけ彼を困らせてみようとした。
そんな意味のわからない会話をして、その日は電話を終えた。
まだ春休み中だったが友達は皆、色々と忙しくなって、なかなか遊べなかった。
だから何となく彼からの電話は嬉しかった。
そして、少しだけまた電話が来る事を期待してた。
その日の夜また彼から電話がきた。
「は?なに?」
しばらくは彼から電話してこないと思っていた私は、ビックリしながら電話に出た。
「お前、今彼氏いんの?どうせいないと思うけど」
彼が質問してきた。
「なにそれ?いないに決まってんじゃん」
私も訳がわからなかった。
「決まってはないだろ」
彼が笑いながらそう言った。
「じゃぁ、俺と付き合わない?」
また速球だった。
「嫌だ」
私も速球で返した。
そんな会話でその日は終わった。
それから彼は毎日同じ時間に電話をしてきた。
私に付き合って欲しいと言い続けていた。
二週間後、私は彼と付き合う事にした。
その時は何となく諦めない彼に、一安を重ねたのかもしれない。