「ま〜た悪さしおって!何度言ったら解るんだ!!」
憂牙は、銃をしまった。
今度は頭を抱えるゴンザが、大きな涙を浮かべ言った。
「痛いよ、ばーちゃん!この状況で俺を殴るのはおかしいじゃないか!?」
「教会の外で、あんたの馬鹿友達が血相変えて走ってくのを見たんだよ!教会嫌いのあんたが、悪さする以外こんな所に来るわけないだろう!!」
そう言って、また杖で殴った。聖書台の後ろに隠れていた子供達が、驚きながらクロムの後ろに集まった。
「ゲン婆、ボケてないんだ‥」
一人の少年がポツリとつぶやいた。
「ま〜!その傷はどうしたんだい!ゴンザがやったんだね。まったく、この子は!!」
膝から血を流している子供を見て、更に殴った。「まったく‥!」「許して!」と教会に響く中、子供達の目線は憂牙に向けられていた。
銀色の短髪に深くかぶったキャスケット。けして長身ではない華奢な体つきにロングコート。そして、子供達の目線から見える顔つきは、とても綺麗で、真っ赤なビー玉の様な目をしていた。
「‥赤い目で」
「‥強くて」
「…綺麗…」
「‥お菓子は無いけど」
四人の子供達は顔を見合わせ、いっせいに声を出した。
「神様だ!!」
子供達は憂牙の周りを取り囲んで、コートにしがみつき、目を輝かせていた。
「クロム!この人はクロムの神様なんでしょ!?」
「…!」
「‥何の話だ」
キャスケットの影であまりよく見えないが、眉間にシワをよせた憂牙は、クロムの方にに目をやった。「いや‥その‥」と返答に困っていると、少し落ち着いたゲン婆が二人と子供達の前にやってきた。
「さ〜さ〜子供達、家に帰るよ〜。悪かったね〜神父さん。それと、そこのお兄さんも。この馬鹿には、きつ〜く言っとくから、またこの子達に話を聞かせてやっておくれ」
「はい。私の話でよければ」
「うんうん。さっゴンザ!この子をおぶって家まで連れていくんだよ!」
すっかり大人しくなったゴンザは、渋々ながらも子供をおぶさり、軽く頭を下げて教会を出て行った。
「そ〜だ、林檎。少し傷がついちまったけど、食べとくれ〜…それじゃあね」
「またね。クロム」
「またね。神様」
つづく