しかしまたロン毛の男は
素早く下がり、前蹴りを放つ
まるで蹴りとは思えないスピード
腹にくらった小泉さんは
また動きが止まる
「はははっ」
ロン毛の男は笑っている
そして2分がたった
「天地さんの前蹴り…避けれないですわ…」
小泉さんが腹部を摩りながら言う
(天地さんて言うのか)
やっと名前がわかった
天地さんは含み笑いをしていた
次の相手は赤川さんだ
小泉さんの
「はじめっ」
という声と共に
赤川さんは、天地さんにピッタリくっついた
そして拳を放つ
ドッゴン
腹を狙ったパンチだったが
天地さんはガードした
それにしても音がすごい
「ひぃー、きっついなぁ」
ニヤつきながら組手の最中でも天地さんは喋る
(…ニヤつきながら…?)
あんなパンチをくらっても笑えるのか
赤川さんは手を休めない
しかし天地さんもガードする
たまに赤川さんの拳が空を切る
(あのパンチの連打を避けてる…)
バッチーン
高い打音が鳴った
とうとうパンチをくらったか
と思った瞬間
赤川さんがグラついた
顔面に蹴りをくらったようだ
「あー、あたってもたか。大丈夫?」
まだニヤつきながら言った
でもあんなピッタリくっついた距離から蹴りなんて
どんな蹴りかもわからなかった
そこで2分終了
(この人実はすごいんじゃ…)
そんな思いが頭をよぎった
「やりにくい…」
赤川さんがボソッと呟いてた
「次、里田かぁ。あーしんどー」
(里田さんというのか)
みんなの名前がやっとわかった
里田さんは背は普通だが
横に大柄だった
そして今一番の成長株らしい
大柄な体が小さく見えるほどの小さい構え
大きく構える赤川さんとは逆だった
すでに組手は始まっているが
里田さんのラッシュは止まらない
一発が強い訳ではないが
小さく振り、素早い
ズバンっ
パンチに意識が集中したところに
強烈な体重をのせたローキックが音をたてる
一方的に天地さんが殴られているだけだった