「えっと…はぁ…」
あたしは面倒な事に巻き込まれたくなく、曖昧に返した。
「側にいてくれるだけでいいんです。それに、この女性がもし車で目を覚ましたら僕が無理矢理拉致したと思われるでしょ？？女性がいた方が安心すると思うし…。まぁ、何と言っても一番は僕が不安なんですけどね。」
仕方ない。そう思い、あたしはあまり乗り気じゃないが承諾した。
車に乗り込み、男がゆっくりとエンジンをかけて走らせた時、
「…ふっ。はははっ」
隣で男が急に笑いだした。「何っ！？」
あたしは急に怖くなった。やっぱり車に乗るべきじゃなかったんだ。
そう気付いた時にはもう遅かった。後ろからも、低い笑い声が響いた。
振り返ると、ちょうど起き上がってカツラを取っている“男”がそこにいた。
「だましたのねっっ！！」あたしはﾄﾞｱを開けて飛び降りようとした。だが、後ろから男に捕まれて身動きの出来ない状態となった。あたしは無我夢中な腕を振り回し、捕まれた手を解いた。すると、車を止め、運転していた男もあたしを掴んだ。
「やめてッッ！！」
あたしはまた夢中で暴れまわり、手当たりしだいになぐったり引っ掻いたりした。
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