未来…
修也は我に返り、声のする方へ歩きだした。
未来の声が微かに聞こえるのは、一軒の喫茶店だった…
店ができて、何十年たっているのだろう…と思うくらいの古びた店だった。
修也はとにかく中に入った。
店の中は外装と違い、おしゃれと言える雰囲気で、店主の趣味なのか、観葉植物が多く置かれている。
修也は周りを見渡したが、未来の姿はなかった…
とにかく座って、コーヒーでも飲もうと定員をよんだ。
『すいません。アメリカン一つ…』
『は〜い、少々お待ち下さぁい』
…未来なのか?
声だけは未来だ…
声のする方を見ると紛れも無く、未来が立っていた。
『未来…未来なのか?』
『あんた誰?お姉ちゃんの知り合い?』
…未来の妹?
まさか!
未来は一人っ子のはず…
確かに未来からはそう聞いていた。
未来が嘘をついていたのか?
修也にとって、そんな嘘は、どうでもよかった…
未来が死んでしまった事に代わりはないのだから…
妹の名前は
(神崎 來未 カンザキ クミ)
双子の妹で性格は未来とは正反対で、頭が良く、どちらかと言えば、引きこもりがちだったらしい…
來未は生まれつき体が弱く、幼くして白血病と医者から診断されていた…
未来が亡くなる前、未来は來未を手術させるため、説得したらしい…
『お姉ちゃん、もうすぐ死ぬかも知れない…
だから、來未…お姉ちゃんの分まで幸せになって…』
『お姉ちゃん…
來未、手術受けるよ…だから、お姉ちゃんも元気になって…約束だよ…』
『うん…』
それが未来の最後の言葉だったらしい…
安心したのだろう
自分は元気に走れるのに妹は家と病院を行ったり来たりで…姉としての妹に対する償いだったのかも知れない…
『あ…そう言えば、お姉ちゃんから手紙、預かってたんだ…えっと、かばんの中に…あった!はい、どうぞ…