怖くて怖くて、目をつぶってただ夢中でそこら中を掻きむしっていた。
途中、何かぬめっとする感触があったけど、かまわずぐちゃぐちゃにした。
「うわっ」
男は小さく悲鳴をあげ、もうひとりの男は「大丈夫かっ??」と声をかけ、あたしを掴む腕を緩めた。
そのすきに、あたしはドアを開けて車を飛び出した。一つ気になったのは、ドアを開ける時に見えた、手についていた薄い膜みたいなもの…。
車から降りたあたしは、家までどうやって辿り着いたのかなんて覚えてないほど夢中だった。
―あれから2週間がたった。
あたしはあの時の恐怖が頭に残り、夜中に外出をしなくなった。そして、買い物に出掛けようと駅のホームで電車を待っていた時、あの時の男が向かいのホームで立っていた。
偶然か待ち伏せかは分からない。けれどあたしを見つけた男はニヤリと笑っていた。
片目に、眼帯をつけて。
あたしは思わず、自分の手を見た…。
あの時の光景が、頭の中に広がる。
“逃がさない”
男の口が小さく動いて、そう言っているようだった――……