「ちょっと貸せ」
タクヤはツヨシのケータイをひったくり、むさぼるようにサイトを読む。
ツヨシは肩をすくめてから、ごろんと寝転がる。
「3億円だってさ。優勝で。今時珍しいよね」
ツヨシは、タクヤのドラマに友情出演していた。これは、タクヤの遊び心からの発案でグループのメンバーをちょい役でだしてはどうか、と監督に話をしたら実現してしまったのだ。
ツヨシの他にマサヒロも出演していた。残念ながら他のメンバーはスケジュールが合わずに断念したが、企画としては、まあまあだとタクヤは思う。
「あぁ、明日から休みかぁ〜。何しようかなぁ…。韓国行くのもマンネリだし…」寝転がったまま、ツヨシがつぶやく。
「大体、仕事してる時は休みが欲しい!って思うんだけど、いざ休みとなると何すりゃいいのかわかんないんだよね」
ツヨシの話を聞きつつタクヤの頭はフル回転していた。どうすれば、優勝できるか?
こんなスーパーカーじゃ駄目だ…。持ってるけど。
そう、タクヤは平均的な男が欲しいと思うものは大概持っている。
「ねぇ、聞いてる?休みはどっか行くの?」
タクヤはツヨシを見てニヤリと笑った。
「ツヨシ、お前、超ナイス」
ツヨシは、ポカンとしている。「何が?」
タクヤは心の空洞が埋まるのを感じた。こんな馬鹿げた事をする事こそ、俺には必要だったんだ。
今思うと、メンバーをドラマに友情出演させるという気まぐれも必然だったのかとさえ感じる。
だったら…この流れでいけば…。
その時、ドアがノックされ男が入ってきた。
「あ、マサヒロ君、おつかれ〜」ツヨシが陽気に声をかける。
マサヒロは不機嫌そうにいった。
「ったく…。聞いてくれよ。せっかくの休みだからって、後輩逹とプロ野球観戦ツアーやろうって言ってたのにヤツらみんな仕事でキャンセルだってよ。まぁ、本当に仕事だから仕方ないけどよぅ」
やはり、とタクヤは思う。
「マサヒロ…お前、車の調子はどうだ?」
突然のタクヤの質問に戸惑いつつマサヒロは言った。
「俺のマシンはいつだって絶好調さ」
マサヒロは旧き良き車を改造して乗り回していた。
タクヤは真剣な顔で二人に言った。
「このレースに出ねぇか?」