「たかちゃん、待ってよ」
「遅いなぁ、みなは。早くこいって」
「たかちゃんが走るの早いからだよ」「待ってたらぁ」みなの声がだんだんとうくなる。
はっと僕は目を覚ました。さっきまで見ていた夢がよく思い出せない。ただ残ってるのは失恋の苦さが僕の心に残ってた。ずっと幼い頃から好きだったみなは僕の兄貴と昨日から付き合い始めた。同級生カップルだ。みなは僕より2つ上だけど呼び捨てにしてた。
付き合いだしたと僕に教えてくれたのは兄貴だった。一瞬、目の前が真っ暗になった感じがした。でも、「良かったね、おめでとう」と伝えた。そう言った時、笑って言ったつもりだけど上手く笑えていたか分からない。でも、そういわなきゃいけないと思った。
次の日の朝、家を兄貴と一緒に出た。兄貴はのろけ話しかみなの話しをし始めた。一番触れてほしくない話題だった。僕は無理やり笑顔を作って相槌をうちながら聞いていた。
「ちょっと待ってよ」
声がする方に振り向くとみなが追いかけてきた。
「おぅーす」
「おはよ」
付き合いだしたというのにぎくしゃくした感じは見当たらない。全然緊張感はゼロだ。いつもとうりだ。
「おはよ、たかちゃん」
これもいつもとうりの挨拶だ。
「もう、ガキじゃないんだからちゃんづけはやめろよ」
「何怒ってんのよ」
「うるせぇ。俺、先行くから」
そう言って僕は駅向けて駆け出した。辛かった。なにもかにもが辛かった。みなの声を聞くのも顔を見るのも辛かった。初恋は叶わないって迷信本当みたいだななんて考えながら僕は走った。失恋の向こう側の現実の世界に向かって…。