タカヤマ刑事は窓際のデスクで新聞を読んでいた。
どうも焦点が合わない。認めたくないが老眼の兆候だろう。
最近はため息が増えた。
若い頃には相棒のユウジと二人で組織暴力団を壊滅一歩手前まで追い詰めた事もある。
無謀とも言える二人の刑事は、いつしか<危険な刑事>と呼ばれるようになった。
実際に事件を解決する回数で上層部を黙らせてきた。
小言をいいながらも、二人をかばってくれた上司もこの前亡くなった。
ユウジは、相変わらす自分のことを、セクシーユウジと呼び若い婦警に声をかけまわっている。
元気なヤツだ。
最近は事件があっても自分が捜査の前線にいるという気がしない。
自分は生涯一警察官であるというポリシーは変わらない。
しかし、タカヤマには昔のようにたぎるものがないのだ。
「どうした、タカ?眉間にシワ寄せて。それじゃモテないぜ」ユウジが声をかけてきた。
「お前よりはこのダンディータカヤマの方がモテる」
タカヤマが笑って言う。
「で、何か面白い事件でもあるのか?」不謹慎な言葉をはくユウジ。
そう、世の中平和なら俺達はヒマなのだ。
そこにもう一人の男が入ってきた。後輩のトオルだった。
「先輩逹、ギャラクシーラリーって知ってますか?」
「なんだそりゃ、テレビゲームか?」ユウジが言う。
「レースらしいんですけど、賞金3億円らしいっすよ。怪しくないですか?」
「公道か?怪しいけど、交通課にまわしとけ」ユウジが言う。
タカヤマは何かひっかかった。「スポンサーはどこだ?」
「さぁ大手の金融業者らしいけど、詳しくはわかりません」
「そういうのは、ちゃんと調べてから話を持って来いよ。」
「はぁスンマセン」トオルは叱られた犬みたいにシュンとなった。
大きなヤマかもしれん。
タカヤマの中でくすぶっていた炎が大きくなった。
潜入捜査か…。
それを察したのか、ユウジが視線をおくる。
「タカ、やる気か?」
タカヤマはダンディーに微笑んだ。
「トオル、お前もついてこい」