先輩ノ背中

ゆ⌒り+゚.  2009-03-12投稿
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ずっと追いかけてた。
背中の、広い背中。
少し猫背な、その背中。

今その背中に寄りかかっていて、先輩と同じ自転車に乗っている。


それだけで、頬が火照って、坂道を下るとき当たる風がそれを冷やした。


『大好き』


信号で止まったとき、先輩の背中にそっと指で書いてみた。


先輩はこそばゆかったのか、ブルッと震えて、背中に手を当てこっちを見る。


私は素知らぬ顔で、そっぽを向いた。



先輩は怪訝な顔をしていたけど、信号が青に変わったので、また自転車はゆっくりと出発した。



少し楽しくなってきた。


次に調子に乗った私は、先輩の脇に手を回し、背中にギュッと抱き付いてみた。



自転車が、横断歩道の真ん中で、キキッと音を立て止まる。



「バカ」



しばらくの沈黙のあと、振り向いた先輩は真っ赤な顔をしていた。



「ほんとに、集中できないじゃん。事故るよ」


「別にいい」


「は?」


「もし骨折とかして入院したら、先輩と一緒の病室にしてもらうんです。

そしたら学校に行くより、ずっと一緒に入れますよ?」


きっぱりと言い切った私を、眉をしかめて見つめていた先輩は、はぁっと溜め息をついた。


「もし! 片方が死んじゃったりしたらどうすんの。


それに…あんま可愛いこと言うなよ」


「どうしてですか?」



私の問いを無視して、先輩は無言で自転車に乗り込んだ。



先輩、バレバレですよ。耳まで真っ赤じゃないですか。



私はクスッと笑って、先輩の頬にそっとキスをした。



自転車がまた、キキッと高い音を立てて止まったのは、言うまでもない。



(完)



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