あれは、じりじりと照り焼きになりそうなくらい暑い暑い夏のことだった。
当時小学四年生で、夏休み中だった私は、両親の離婚調停のため、母方の祖母の実家に預けられていた。
その日は午前中、何もやることがなくて、いつもなら最後の最後にやってしまう夏休みの膨大な宿題も、自由研究と絵日記を残して全部おわってしまった日だった。
「つまんない!」
わたしは思わずそう声をあげた。
唯一の暇つぶしは終わってしまったし、この家にある本といえば細かい字の本や分厚いハードカバーか辞典しかない。漫画でもあればよかったのにと、恨めしく思った。
近くに友達もいなくて、遊べない。たまたま昨日、近くの公園にいた子たちに遊ぼうと誘ったら「都会ものとは遊びたくない」と石を投げられて怪我をした。
おばあちゃんは激怒してその子のうちに怒鳴り込んだので、しばらくは警戒されるだろう。
額の傷はずきずき痛むし、最悪な夏だ。
わたしは四年生の子供に似合わないため息をついた。