何がヤバイかなんてわかるわけもなく、逃げようとした。どこに逃げればいいかもわからずに。
倒れた自転車を起こしてこぎだそうとした瞬間、自分でも理解できない思考が浮かんだ。
(あの娘は大丈夫だろうか?)
さっきまで朝食をしていた喫茶店の店員だ。別に彼女でも、ましてや友達ですらない女のことなど気にかけてる場合じゃない。
でも、俺がこぎだしていたのは喫茶店の方角だった。
今、思えばまさに周りが見えてなかったのだろう。道路は歪み、崩れている家、炎上している家もあったというのに。