ある雨の夜、親友の岸田純平が殺害された。
俺はその夜は彼女の麻美とカラオケを楽しんでいた。
事件の一報を聞いたのは翌日の朝だった。
「えっ! 純平が‥!?」
俺は急遽仕事を休み、純平の実家に車を走らした。
純平の実家には数人のマスコミと警察官が集まっていた。
「んっ?」
その中に懐かしい顔が見えた。
「おい、学。」
と声をかけてきたのは縁なし眼鏡をかけた勝沼だった。
「おい久しぶりやな。元気してたかよ。」
て勝沼は笑顔で俺に近づいてきた。
(チッ、こんな時に‥)
相変わらず場の空気の読めない勝沼にうんざりだ。
「おい、玲子。 ちょっとこっち来いよ。」
と、勝沼は玲子を手招きした。
玲子は地元の不動産会社の社長令嬢で容姿端麗、才色兼備‥まさに男性陣から見て高嶺の花。
我々のアイドル的存在の女性である。
「もう純平君が殺されたっていうのに不謹慎ね、貴方って。」
と冷ややかな言葉で勝沼に言うと、
「いいやん。奴のおかげでこうやってみんな集まれたやん。」
と、笑い飛ばしていた。
その様子を離れた所から冷めた目で見てる二人も近づいてきた。
「よっ。」
そう言葉少なげに挨拶したのは稲田だった。
「久しぶり、吉野君。」
と、にこっと八重歯を見せて小さく手を振りながらやって来たのは野々村だった。
俺はその二人に会釈をし、勝沼と玲子を含めサークル仲間の五人はしばらく立ち話をした。
俺の名前は吉野学。
別に何の取り柄もない28歳である。
我々五人はこれから警察に疑われるなんて俺はこの時何も思ってもいなかった。