汚染 57

ふく  2009-03-15投稿
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『一人じゃ寂しいだろうから』
貴方の言葉
そんな風に言ってくれるならどうしてあの日別れ際に私が言った『寂しい』に答えてくれなかったのだろう

考えても仕方がない
此処は職場
ただ一人は危ないと感じたからかもしれない
どうせ想われてはいない
余計な感情を振り切る様に『ありがとうございました』と頭を下げた

エレベーターの前で別れた
貴方は『いいよ』とだけ残して下りて行った

上へ向かうエレベーターの扉が開く
足早に更衣室へ向かい着替えを済ませて一階へと下りた

扉が開く瞬間少しだけ期待した
『何か食べて帰る?』とそこに貴方が待っていてくれているかもしれないって
貴方が笑顔で立っているんじゃないかって

目の前に広がったのは誰もいない暗いロビー
一歩を踏み出して周りを見渡した
貴方はいない
それだけで気持ちはどうしようもなく曇って行く

当然の事ながら自分の無駄な期待に笑えて来た
誰もいないロビーで笑ってみた
空っぽの笑い
『そんなはずはないか』と
『私は大丈夫』と
『寂しくも悲しくもないんだ』と
言い聞かせる様に笑った

さっきまで一緒に居た貴方の記憶を消したくて
自分の希望を消したくて期待はしないと決意したはずだったのに
事あるごとに心が揺らいで決意が脆い自分を妙に恥ずかしく思ったから

涙に変わらない様に笑った

他の誰でもない
自分を騙す為に

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