勝沼は警察署の取調室で絞られていた。
勝沼はなかなか白状しないどころか無実を主張してる。
「俺は純平を殺してないって。信じてくれよ。」
と、勝沼は同じ言葉を繰り返し言っていた。
純平の残したダイニングメッセージ
かつぬま
この動かぬ証拠がある限り勝沼の容疑は晴れないことは事実だ。
勝沼がいないサークル仲間四人は純平のお通夜に顔を出した。
遺族である純平の両親に挨拶すると、純平の母親はなぜか野々村をじっと睨んでいた。
俺は純平の母親が野々村を睨んでいるのが気になった。
そんなお通夜が終わって俺たち四人は純平の家の前で立ち話していると、ブツクサと文句を言ってる勝沼に出会った。
「よっ、勝沼。」
気楽に稲田が声をかけると、
「うわ、最悪。」
と相変わらずの被害妄想満載な勝沼は俺ら四人に嫌味を連発して
「何で俺だけ。お前らは取り調べはないん?」
と言う勝沼に稲田が
「当たり前でしょ。 だって純平の携帯電話にお前の名前がダイイングメッセージとして残ってあったんだろ?」
「それって何だよ?」
「ダイイングメッセージ、知らないのか? 死ぬ寸前に犯人を示す暗号みたいなようなもんだよ。」
その言葉に俺はちょっと疑問が沸いた。
(暗号かぁ‥)
すると勝沼も俺と同じように
「それって暗号だろ? じゃあ俺の名前‥暗号になんない?」
確かにもし勝沼が犯人なら‥純平はこの単純バカの勝沼に分かりやすい《かつぬま》とは書かないだろう。
(だったら犯人は他に‥)
そう思いつつ、勝沼と稲田の会話を聞きながら携帯電話を手にした。
同じように玲子や野々村も携帯電話を弄っていた。
「なぁ、玲子‥今日さぁ同じホテルに泊まらん?」
勝沼は本当に同情する値にならない。こんな状況なのに玲子をホテルに誘うなんて。
もちろん玲子は断った。すると今度は野々村をホテルに誘い始めた。
「なぁ、愛‥一緒にホテル泊まらん?」
「えっ、ありえない。勝沼君って玲子一途じゃなかったん?」
その言葉に勝沼は不気味な笑いでごまかした。
「グシシ、アハッ。」
その夜玲子と野々村は自宅に、稲田と勝沼は近くのビジネスホテルに、俺は純平の家に泊まらせてもらった。