次の朝早く私と一安は、一安のお母さんが運転する車の後部座席に、並んで乗り私の実家へ向かった。
私の実家までは、50分もあれば着く。
車が走りだして40分は、私のあまり知らない道が続いていた。
だが、だんだん見慣れた景色に変わった。
もう実家に着く。
一秒ごとに、私の淋しさがましてくる。
その時不意に一安が私の手を強く握った。
「すぐ電話しろよ」
一安はお母さんに気付かれない様に、小さな声で私に言った。
一秒ごとの淋しさが、1時間後の安心に変わった。
そして遂に実家に着いた。
私の家の玄関から、父親が出てきた。
車から出たら、私は父親に怒られると思った。
一安は握っていた私の手を離して、一言だけ
「がんばれよ」
そう、真剣な顔で言った。
車から出て行った私を父親は笑った。
そして私の父は一安のお母さんに謝り、お礼を言った。
そうして一安のお母さんは車を走らせ、その場から去って行った。
父は怒らなかった。
「なにやってんだよ」
ただそれだけ笑いながら言った。
私が家に入ると居間に母親が座っていた。
「そんなに皆に迷惑かけて、何が楽しいの?」
母親は、まるでこの世の終わりかの様な顔をして声のトーンも変えずにそう言った。
「別に何も楽しくない」
私はそう答えて、自分の部屋に逃げた。
そんな私を父親が追ってきた。
父親は私の気持ちもわかると言った。
そして母親はすぐに感情的になるけど、その気持ちもわかってあげて欲しいといった
父親の話はそれだけだった。
話が終わってすぐ私は一安に電話した。