参入志願者逹6
クミはミュージシャンだ。それもこの国でトップクラスの人気があった。
何よりも歌うことが好きで、そして応援してくれるファンがいる。支えてくれるスタッフがいる。
自分は何て幸せなんだろう。そう思っていた。
そんな時、自分の無知からくる不用意な発言で多くの人達を傷付けてしまった。
自分は何てバカだったんだろう。すごく反省している。自己嫌悪で潰れそうになる。
そんな自分の事を必要としてくれるファンがいる。
クミは自粛期間を経て復活した。
本当に私は幸せ。歌うことで罪滅ぼしができるとは思わないが、他に出来る事がなかった。
もっと歌いたかった。何か人の役に立ちたかった。
匿名で募金などしてみたけど、世の中お金を必要としている人達は大勢いる。
全然足りないよ。私一人の力なんか、たかが知れてるもん。
でも、これが二人だったら?もし三人だったら?
少しは世の中の役に立てるかも知れない…。
自分が生きた証を刻めるかも知れない。
ひょっとしたら皆、誰かのためになろうとして生きているのだろうか?
それが、自分の存在した証になると信じて。
そんな事を考える時間が今まで無かった。
生きて、歌って、食べて、眠って…。
一生懸命だった。
でも、自分は気が付いてしまった。愛の存在に。
何か大きな事が出来そうな予感がした。
でも、私一人ではダメだという事も分かっていた。
自分と同じ境遇にいる人の協力が必要だ。
バカにされてもいい。偽善者と呼ばれてもいい。
行動を起こさなければ。
アユミさんに声をかけてみよう。
アユミさんは、一流のミュージシャンだ。
彼女はきっと愛を知っている。真の愛を。