「それなら話すけど‥」
純平の母親は重い口調で話し始めた。
「純平から野々村さんをふったの。理由は野々村さんと稲田くんが純平に内緒で旅行に行ったんだ。」
「それで?」
「しかし野々村さんは純平と別れようとはしなかった。でも純平は復縁はしなかった。」
「ふ〜ん、純平らしいな。」
「純平は大河内玲子と付き合い始めたらしい。それで‥勝沼から嫌がらせの電話がよくかかってきて大変だった。」
「なんか全て初耳。」
「純平はあの日、勝沼に話をしにいくと言って雨の中を出かけて行った。
その帰り道に犯人に殺された。その犯人ってやはり勝沼か?」
「いや、勝沼じゃないよ残念ながら。」
「じゃ、誰よ?」
「その前にもう一つ。勝沼に話をしにいくこと、誰かに話した?」
「あぁ、大河内玲子と野々村さんに。」
「それはいつ?」
「野々村さんはあの日家に来たから話したけど、大河内玲子は昨日みんなが家にやって来る前、事件を知ってすぐにかな?」
「そうか、ありがとうございます。」
「いえいえ。 早く犯人教えてくれない?」
「それは純平の告別式の後に教えます。ちょっと本人に確認しなきゃいけないので。」
朝食を食べ終え、俺もピシッと礼服に着替えた。
身なりを整え、純平の両親と一緒に告別式の準備を手伝った。
午前11時、告別式が始まった。
相変わらず玲子を口説いてる勝沼。ニヤニヤして不謹慎な奴だ。
純平の母親から全てを聞いた俺は明らかに昨日とサークル仲間の見る目が変わっていた。
《旅行サークル》のメンバーの中に犯人はいる。
俺はそっとみんなの中に入った。
「なぁ、学って昨日ここに泊まったん?」
勝沼がニヤニヤしながら聞いてきた。
「そうだけど。」
俺は昔から勝沼が嫌いだから冷たくあしらうように言った。
「ホテル代ケチって、そう死人のいる家に泊まれるよな。」
相変わらずムカつく奴だ。俺は無視した。
勝沼は俺を笑い、玲子や野々村にも同じことを言っていた。
(本当に気にくわない、純平じゃなく勝沼が死ねばいいのに。)
と俺は思いながら、ゆっくり野々村に近づいた。
「なぁ野々村、ちょっと聞きたいことあるんだけど。」
「えっ、私に?」
「うん、純平のことで。」