クミは何だか泣きそうになってきた。
アユミさんは分かってくれたんだろうか…。
少し沈黙があった。
アユミは大きな目を一度つぶり、じっとクミを見つめる。
クミは採点を待つ生徒のようにドキドキする。
何て可愛いひとなんだろう…。
何故か全然関係ない事が頭に浮かんでは消える。
そしてアユミが口を開いた。
「言いたい事はよくわかったわ…。私は何をすればいいかな。それに二人では心細いから」
そう言ってアユミはケータイを取り出して電話をかけ始めた。
「あの…ありがとうございます。分かっていただけて嬉しいです」
クミはお礼を言って続けて聞く。関西訛りがある。
「誰にかけてるんですか?」
アユミはチラリとクミを見て答えた。
「ナミエさんよ」
クミはぎょっとした。
ナミエさんよって…。
あのナミエさん!?
超大物ミュージシャン、大先輩、一児の母…。
クミの頭の中がぐるぐる回る。
「あぁ、アユミです。えぇ、お久しぶりですですね。今、お時間大丈夫ですか?」
アユミは時々、クミの方を見て話している。
「クミちゃん発なんですけど、私達が世の中の為に何か出来る事はないか、という話をしたいんですが」
クミは感心した。
自分が30分かけて話した事をたった五秒で伝えるなんて…。
アユミは何度か返事をして電話を切った。
「ナミエさん何て…」
クミは恐る恐る聞いた。