「えっ、どうしたんだい?」
「いいから、早く、早く!」
クロムは昨日の子供達に手を引かれ、外を走っていた。
着いた場所は昨日の教会だった。”あれを見て”と指をさした場所に、いびつながらもその形らしき、参拝用の机や椅子があった。
床に積もっていた、砂や落ち葉、ガラスの破片や木屑が、綺麗に片されていた。
聖書台の近くで二つの黒い影が動いていた。
「あなたは、昨日の‥」
「あっ!クロムの旦那!!昨日はど〜もすいませんでした。これ、観てくださいよ!少しいびつですが、座るぶんには問題ないですよ!」
額には昨日の傷と、大量の汗をかき、両手には金づちと釘を持っているゴンザがいた。
「あと、これ。そこら辺に咲いてた花だけど、俺、教会とか学校とか行ったことがなくて、教会のイメージって解らなくて‥」
チンピラ風の男が、路上で見かける花を、数本、クロムに渡した。木片で傷付けたのか、手には無数のスリ傷があった。
「‥ありがとう。あなた達の教会のイメージが、こんなに温かいものであって良かった‥」
「へへっ」
二人は少し照れて笑った。
「ずるいぞゴンザ!自分ばっかりクロムに気に入られたいからって、いい子ぶっちゃって!俺だってそれ位出来るぞ!」
「私だって!」
「俺も・・」
「僕も!」
そう言って、子供達はゴンザの所に駆け寄った。
日は高く登り、ガラスの割られた窓からは、太陽の光が何本もの線になって薄暗い教会の中に差し込んでいた。
聖書台の上には花が飾られ、机や椅子も、5・6人座れる数に増えていた。
床に釘を打ち付けているクロムにゴンザが言った。
「だいぶ、それっぽくなってきやしたね」
「‥ああ」
「なんかいいもんですね。壊れた物が直っていくのって。こんな事するのガキの頃依頼ですよ。ここも、最初は綺麗な教会だったんですよ‥といっても、一度も入ったこと無いんですけどね」
「どうして入らなかったんですか?」
「いや〜見ても解るように、ガキの頃から悪ガキで、盗みやケンカばかりでして‥」
ゴンザは額の汗をぬぐい、ゆっくりと話始めた。
つづく