ピアスをあける。穴をあける。
それは生きてるって跡を残す事。
そこからぬけて広がる
アッチ側の世界が私の全てなの。
『ピアス』
それは生きるって穴。
ファーストピアスは中2だった。
冬の寒い夜、玄関には2日前に降り始めた雪がしんなり積もっていて
冷え切った指先は、赤さを通り越して爪が紫になってた。
抱えた膝の間に鼻をうずめて、体はこれ以上に小さくはならないだろうってくらいコンパクトに折り畳まれているのに、
風が吹くだけで、体が寒いと自発的に震える。
頭では無駄な行為だと分かっていても、体は危機が身にせまると、意思など関係無しに動くのだから仕方ない。
あぁ、震える事で暖を少しでもとろうとしてるのか、SOSを出して周囲の気をひこうとしてるのか、知らないけど
何でも震えときゃどうにかなるだろう。ってお気楽な考えだなあ人間の細胞は。
このくらいの事、気休めにしかならないのに、それでも体は無駄に生きようとガタガタ震えている。
制服と言う、暖衣としては全く機能を持たないこの無力な服のスカートを、自ら更に短く切った反面で、体は生きようと必死なのが悔しい。
文明は開花して、世には体をあたためる為の衣服やモノが溢れていると言うのに、
進化を逆走して男の目を眩ます為にスカートを短くし、脚をさらけ出した自分はお金も無く、この寒さを乗り切る事すら今は危うい。
笑い話だけど死んだら本当に笑えないよな〜。とか言っても、やっぱり何故か笑えてきて、もはや寒さで気が狂ってる。
そんな時、ポケットの中に入ってた校章に手が触れた。取り出して眺めてると、キラキラ輝いて見えて、気持ちがぼんやりしてきて
それを耳にいつの間にか突き刺していた。
プチッ。って生々しい音が二回、血が滲んで、それを指で拭うと確かに耳たぶに校章が貫通していた。
最初は感覚が無かった耳も徐々に熱くなって、耳に確かに異物が突き刺さってて
今ままで感じた事のない違和感が確かにそこにあるのだ。
不意に不自然なそれが人生を変えてくれるような気がしてきて、生きる希望のようなモノを感じた。
何もかもを、きっと自分でコレから生きれるんだと信じて
痛くないけど、「痛い痛い」と連合しながら、号泣して朝を迎えれた。
玄関の鍵があき、靴箱の鏡を見て、耳に突き刺さった校章に笑えた。
それが私のファーストピアス。