一安は、私が別れを口にすると怒り出す。
だから、一緒にいる。
そう思ってた。
その日一安と一安の弟と一緒に出掛けた先で、一安と私は喧嘩をした。
私は
「帰る」
それだけ言って帰ろうとしたが、もう最後のバスが行ってしまっていた。
帰れない。
私は一安の家に帰ろうとしていたが、一安の家まで歩いたら3時間近くかかる。
3時間後は、真夜中だ。
そんな時間に帰ったら一安の両親に私も一安も怒られる。
やむを得ず私は、そばの駐輪場から自転車を盗んだ。
そして急いで一安の家に向かった。
一安の家に着くと、一安のお父さんとお母さんが居間にいた。
「一安達は?」
少し怒った様にお父さんに聞かれた。
「もうすぐ、帰ってくると思います」
私は本当にそう思っていた。
「一緒じゃないのか?」
お父さんは、不思議そうに聞いてきた。
「一緒だったんですけど、一安に先に帰ってる様に言われて…」
私は、とっさに嘘をついた。
「こんな時間に一人で帰ってきたら、危ないだろ、なにやってんだよ一安は」
お父さんは激怒した。
「もう帰ってくるよ」
一安のお母さんがお父さんを、なだめてくれた。
だが一安は、いっこうに帰ってくる様子がない。
私が家に着いたのは12時頃だったが、もう1時を廻っていた。
「帰って来ないじゃねーかよ」
お父さんは怒り心配している。
「あゆ一安と途中まで一緒に帰って来たんでしょ?」
お母さんに聞かれた。
もう嘘は付けないと思った私は、一安と喧嘩して、先に帰って来たことを正直に話した。
「じゃぁあゆが家に居るの知らないの?」
一安のお母さんが優しく聞いてきた。
「はい、ごめんなさい」
私は嘘付いた事を謝った。
「あゆが謝んなくたっていいんだよ、また一安がわかまま言ったんだろうから、じゃぁ、そのまま友達と遊んでるかもしんないね」
お母さんは、落ち着いた声でそう言った。
「じゃぁ待っててもしょうがないから、寝るよ、あゆも寝な」
お母さんは続けざまにそう言って、私に笑いかけてくれた。
だが、布団に入っても私はなかなか寝れず一安の友達に電話をした。
しかし、誰も一安の居場所を知らなかった。