*友達の裏切り*
「…ひ…ろき」
あたしが叫ぼうとした言葉は、弘樹が言った。
「…やだぁ、弘樹クンじゃあん♪」
女達は、弘樹の元に駆け寄っていく。
「ねぇねぇ♪あたし達とどっか行こう?」
「……んな」
「えっ?」
「さわんじゃねえ!!!!!」
弘樹の声が、廊下に響き渡る。
「…美耶」
弘樹の低い声に、美耶の肩が震えた。
「…てめぇなんかもー好きじゃねぇよ。新しい男掴まえんのは勝手だけどよ、せいぜい捨てらんねーよーにしろよ」
鼻で弘樹は笑うと、座り込んでるあたしに手を差し伸べた。
「…何よ!!あ、あんたなんか嫌い!!」
美耶達は、階段を上がって行った。
「…ひ…ろき…」
「…ありがとな、友」
笑ってくれたね、やっと…。
「…あた…し、弘樹…が好きだから…美耶と…幸せ…になって欲しく…て…」
「…俺、気付いたんよ」
あたしの頭を撫でながら、ゆっくりあたしを立たせてくれた。
「美耶にフラれて、落ち込んでた時とか泣いた時とか、いつも友がいてくれたろ?」
涙でグシャグシャのあたしの顔を、優しく大きな手で包んだ。
「…俺も、友が好き」
抱き締められた暖かさが、今も残ってるよ。