逃避

ケィ。  2009-03-19投稿
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助けて下さい。
僕らは追われているのです。

駆ける度、小さな針が幾つも僕らの踵に刺さって、今にも足が止まってしまいそうです。

逃げ切れない。
逃げ切れない。
助けて下さい。

地に足を着ける度、針は深く突き刺さります。
針の先が肉を貫き、骨をうがつ感触が、怖気と共に神経を這い、僕の脳に伝わります。

足を止めてはいけない。立ち止まれば二度と何処にも辿り着けない。

嫌だ、嫌だ、もう走りたくない。

助けて下さい。
奴らは周到に罠を張って、僕らの邪魔をする。

針が抜けない。
小さな針はすっかり僕の肉に埋まってしまって、もう誰にもわからない。
痛い。

針を出すために、必要なものは?
トゲ抜き?
それとも、ナイフで肉を切り裂いてえぐり出す?

だけど僕らには何もない。
針は埋まったまま、何より、走らなければ。

助けて。
僕らは追われている。
僕らの足跡は赤く、鉄臭い。

小さな針の痛みは、小さな痛み?
そう。
きっと大した痛みなんかじゃない。
チクチクと、突き刺さるだけ。
だからまだ走れる。
まだ…走れる?

走らなければ。
僕らは追われている。針はもう抜けない。
チクチクと。
ヂクヂクと。
痛む。

でも大丈夫。
まだ大丈夫。
針が血流に乗って心臓へ達しない限りは。
たとえ傷口が膿んでザクロの様にただれていても、大丈夫。

速く。
速く。
走らなければ。

奴らが追ってくる。

奴らが追ってくる。

奴らが追ってくる。…

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