魔物が住まう、崖淵斜陽館、今宵は如何なるお客様が、おいでに成りますでしょうか。
時代は幕末、貧乏浪人が海辺で釣り糸を垂らしていた。
「仕官も出来ない、傘張りの仕事だけでは、暮らして行けないしな、どうしたもんかな」
最早、長屋の家賃も、かなり滞納していた。
釣り処では無かったのだか、食事にも在り付けない状態で釣りをしていたのでございます。
其所へ、見慣れぬ透明な瓶が波で、近くに打ち寄せられた。
貧乏浪人は売れるかと思い、漂流していた透明な瓶を竹の釣り竿で引き寄せたのだった。
透明な瓶の中にはピンクの液体が入っており、コルクの蓋がしてあった。
売るには、惜しい感じがして、蓋を開けた瞬間だった。
ピンクの液体が気体に変わり瓶から飛び出ると、大きな魔人が現れた。
浪人は驚きの余り腰を抜かした。
魔人「よくぞ開けてくれた、願いを3つ叶え様」
浪人「助けて〜」
ハイズリながら、目の前の恐怖から逃げ出した。
魔人は、欲の無い奴だなぁと、一つ呪文を唱えると、空高く消えてしまった。
魔人の言葉が浪人には伝わらなかったのだ。
しかし、貧乏浪人が長屋に帰ると、温かな食事が用意されていた。
翌日、ひょんな事から志願が叶ってしまった。
魔人は、助けての意味を広く捕えたのだろうか。
次のお客様は、貴方かも知れません。
崖淵斜陽館から、低く笑い声が木霊した。