甘える為の第一歩。
私は自分の家に帰り三日間家で過ごした。
私の携帯電話は折られてしまって、持っていなかった。
一安が私の家に電話しても、私の親は取り次がない。
三日後私は一安に電話した。
電話に出た一安は連絡が取れなかった事を少し怒っていた。
「お前、なんで連絡してこないんだよ」
「ごめん、親がうるさかったから」
私は嘘の言い訳をした。
「で、今日は家来れんの?」
一安は、普通の口調で聞いてきた。
「今からは、逢わないの?」
私は今まで一度も言えなかった「逢いたい」という台詞を言いたかった。
「夜こいよ、俺今から出掛けるから」
冷たい一安。
「なんで?」
「逢いたい」と言いたいのに、言いかけると、喉に何かが詰まった様に声が出なくなる。
返事が怖い。
もたもたしている私に一安が
「じゃぁ、夜ね」
そう言って電話を切ろうとした。
「ダメ」
私は、焦ってそれを止めた。
「なんだよ、もう行くんだから後でね」
「逢いたくないの?」
やっぱり言えない。
こんな状況じゃ確実に断られる。
「お前、三日間も連絡しなかったんだから反省してろよ」
一安は他の事に夢中で私の気持ちに気付いていなかった。
そのまま電話は切れた。
私が言いたかったのは
「逢わないの?」じゃなくて
「逢いたくないの?」でもない。
「逢いたい」それだけだったのに。
一安には甘えられない。
第一歩を踏み外した私は、また三度目の浮気をした。