だから、私は一安に別れて欲しいと頼みつづけた。
でも、一安の答えはいつも「No」だった。
ある日の夕方、新しく買った私の携帯に、一安から電話がきた。
「もしもし?」
一安は機嫌が良さそうな声だった。
「お前さ、俺と別れたいんだろ?」
一安のその言葉にびっくりした。
「うん」
別れてくれるのだと思いながら、私は一安に返事をした。
「今日来たら別れてやるよ」
一安のその台詞には、さんざん騙されている。
「また、嘘でしょ」
私は呆れた口調で返した。
「今回はホントだよ」
一安が真面目な声で言った。
私は少しでも可能性が有るならと思い、行く事にした。
その日は一安の友達や後輩、皆で飲み会だった。
私は彼に黙って、一安に逢いに行った。
彼にはもう、何を言われても行かないで欲しいと言われていた。
その夜、私の携帯に彼から着信が入った。
鳴りだした携帯を一安が見つけ、私を振り払い電話に出てしまった。
そして一安は、彼を呼び出した。
彼は来ないと思った。
だが、彼は呼び出された場所に本当に来てしまった。
彼は、一安にさんざん殴られた。
彼の顔は原形がわからないくらい腫れていた。
一安は、私の前に彼を連れて来て
「俺と、こいつどっち選ぶの?」
一安が私に迫った。
私は5分位沈黙してから
「一安…」
そう言った。
彼はその後一週間入院したと、人づてに聞いた。
私に罪悪感はなかった。
でも、確信した。
もう一安からは逃げられない。