よく晴れた日曜日…。
「そこのお兄さん!ちょっと待って」
奇妙な男が私に声をかけてきた。
その男は上下に白いスーツを着て、サングラスをかけている。
「お兄さん!100万円でタイムマシン買わないか?」
男が威勢のいい声で意味のわからないことを言ってきた。
私は当然のように訊く。
「そんなのどこにあるんです?」
男は当然のように答える。
「まだ完成してないんだけど、完成したら渡すよ」
「ばかばかしい」
こんな詐欺、誰が騙されるか。
「タイムマシンさえあれば、宝くじとか当て放題だよ!未来へ行って当たりの番号を確かめるのさ」
「そんなの信じませんよ」
私が歩き出そうとすると、男がまた言ってきた。
「じゃあ、証明しようじゃないか」
男は自信に満ちた顔で言う。
「タイムマシンが完成した時、私は過去に戻る」
「え?」
「いまから5分後に、私がここに現れるはずです。未来の私が」
「どういうことです?」
「私は誓います。タイムマシンが完成したら、私は過去のこの時間に来ることを。しかもこの服装でね」
そして5分後、上下白スーツでサングラスをかけた男が本当に現れた!
同じ男が2人、目の前に立っている。
「ほら約束通り来ましたよ。タイムマシンは完成しましたよ」
そこで、そばで見ていた若者が声を上げた。
「俺タイムマシン買うよ、絶対!」
若者が契約書にサインをする。
私もつられてサインをした。
100万円でタイムマシンを買う契約をしたのだ。
結局タイムマシンは真っ赤な嘘だった。
未来から来たという男はあの男のグル。
契約書にサインした若者もグルだった。よく考えればわかることだ。
その場の雰囲気にのみ込まれたらそこで終わり。
何事も、疑うことが肝心だ。