現に「本の売れない時代」とまで言われている、厳しい出版業界で、百万部を越えるベストセラー作家と呼ばれるのは、最近では、テレビなどで活躍している芸能人が目につく。本当に芸があるのかと、愚痴りたくなる自分を時代が時代だと無理に納得させる。
そんな時代の中、私は自分の意に反して仕事をしている「携帯小説家」だ。
確かに、それで生活は、成り立っている。強いていえば、少しぐらいの贅沢はできるゆとりもある。例えば、本にしても、今でいう、大人買いという買い方を大型ブックセンターでしている。
あの町の本屋さんで、何十分も文庫本の本棚の前に立ち尽くしている私はもういない。いるのは自分を偽り、鎧を覆った「携帯小説家」。それが今の私だ。