参入志願者達7
石川 遼一は人生の岐路に立っていた。
三十七歳の春。
よく似た名前の十代でプロになったゴルファーがいるが、彼とは全く別の人生を歩んでいる。
当たり前だ。
俺は俺であり、他の誰かではない。
遼一は、それでも十代の頃は人並みに自分の人生を真剣に悩んだり、<本当の自分探し>をやったりした。
本当の自分なんていない。自分は自分でしかないのだ。
カッコ悪かったり、ダサかったり、たまに気の利いた事を思い付いたり…。
それぞれが全て自分。
偽者の自分はいない。
自分にとって幸せだったのは、友人に恵まれた事だ。
しかし、それは遼一にとっては厳しい道でもあった。
中学生時代…。遼一は学年でもリーダー的なグループの一員だった。
遼一の中学生時代は、いわゆるツッパリブームであり、遼一も例に漏れずリーゼントをキメていた。
よく仲間と一緒になってケンカしたり、ふざけあったり、意味もなく大声で笑ったり…。
毎日が楽しかった。
ただ、遼一のグループは、ただの不良ではなかった。
絶対に弱い者イジメ等しなかったし、教師とも上手く折り合いをつけてやっていた。ドラッグなんか見るのも嫌だった。
ただ、ズルをするのが嫌で真っ直ぐに生きたい男達だった。
真っ直ぐ生きていれば、衝突は避けられない。
男は自分が大切なものを守る為に強がるのだ。
それが俺達のポリシー。
教師達はそんな彼らを、健康優良不良少年と言って笑って見守ってくれた。
当時のマンガか何かのフレーズらしいが、彼らは結構気に入っていた。