「どうして地下なんですか?」
雪が首を傾げて訊ねる。
「トゥール港から北への船は出ていない。
あんたらには『俺の』船に乗ってもらう。」
メイルは微塵も雪を見ずに淡々と答えた。
「『俺の』…?」
要するに彼のMy船に乗せてくれると言う意味なのだろうがその言い回しにランスォールは僅かな恐怖と違和感を覚えた。
やがて薄暗い地下を抜け、一行は外に出た。
「ここは?」
シーラが聞くとメイルはなんだか得意気な顔で告げる。
「『俺の』港だ。」
だから、その『俺の』って…
苦笑いを浮かべたランスォールがここから500メートルほど離れた船を見る。
連絡船と漁船の中間くらいの大きさのメイルの船。
特に不審な点は見当たらないのだが、ランスォールは正体の見えない嫌な予感に襲われた。
まさか、あの予感が現実になるなんて…(ランスォール談)
――船に問題はなかった。
そう、問題があったのはメイルの方なのだ。
「うえぇぇっ」
波は高くない。
うねりも大したことはない。
しかし、船は右へ左へと蛇行しながら進む。
しかも運転しているメイル本人はケロリとした様子で船を進めている。
「なんだ、あんたら船酔いするのか。
最初から言えば酔い止めやるのに。」
自分が原因だと思っていないのでこの運転は救いようのないものだった。