サチヨが得意気に話し始めると、その側にいたタツヤが、すぐに食い付いてきた。
『へぇ、マジかよ?!成沢って、元番長の青山とツルんでたヤツだろ?!転校生の。』
『そうよ。ベージュのボブヘアーでスレンダーな体型の。
ちょっと可愛いからって調子こいてる女。』
相変わらずのサチヨの毒舌ぶりは、聞き慣れていた筈だったケド、
それは、クラスメイト達にとっても興味をそそられる内容だった。
『そういやぁ、成沢って、隣町のK中から来たって話じゃん。』
興奮気味のサチヨに返した、タツヤの言葉が、更に彼女を調子付かせた。
『そうそう!!そうなのよ!!ユカのカレシと同じK中なのよ!!
でさ、その男って、噂によると、かなり遊んでるっぽくて、2股のみならず、3股も4股も掛けてるって。』
サチヨは、小鼻をヒクヒクさせながら、更にエキサイトしていた。
こんな話、ユカに聞かれたら大変だケド、この日は幸い、ユカは珍しく学校を休んでいた。
体調が悪いというコトで、お母さんから担任の渋川へ連絡があったそうだ。
『ひっでぇ男だな。じゃあ成沢ともまだ別れてねーんじゃね?!
秋田谷も遊ばれてるだけってコトか?!ヒャッハッハ。』
タツヤが、サチヨの仕入れて来た、この情報を聞いているトキの態度は、まるで人の不幸を楽しむかの様だった。
『いいんじゃない?!ユカも裏切り者だし。
初めに、奈央が裏切られて、次はあたしが裏切られたじゃん?!
だから裏切り者は、裏切り者に裏切られて当然よ。
目には目を、歯には歯をよ。』
サチヨは、そう言った後、気だるそうに大きなあくびをした。
クラスメイト達は、サチヨとタツヤの会話を聞きながら、
他人事だからと、ただ聞き流す者や、誰かに噂の検証をさせようと、目をキラキラ輝かせている者など、反応は様々だった。
あたしは、サチヨの言葉が、さっきからずっと心に引っ掛かっていたから、
突然、そのコトを言ってやりたい衝動に駆られたんだ。