ただ、ただ、続く竹林の小道をひたすら走っていた。
所々に、無常な微笑みを浮かべた地蔵がたたずんでいる。
息ぐるしさはない。
俺は戦場で死んだ…。
幾人の敵兵士を殺し、そして自分さえ殺した…。
国のために殺す、それが最初の真理だったが、言葉では言い現せない、戦場の現実、は俺を破壊し、俺を殺した。
死んで最初に着いたのは地獄の門の前だった。
死んだ時の格好で、ひたすら紅く、ひたすら高い地獄の門を、ぼんやり眺めていた。
『この門をくぐり、地獄に墜ちるんだろう…』
イメージ通りの展開がふと、頭をよぎる。
『仕方ない…か…』
そう思った時、足元から響き渡る、太く、重い声が俺に語りかけてきた。
゙天国の門をくぐりたくないがと。
それがこのゲームの開始を伝える、響き渡る銃声だった。
ルールは簡潔だった。
今から数刻後に地獄の門から鬼が俺を追いかける。 俺は、その鬼から逃げ切り、天国の門をくぐれば、勝ち、めでたく天国の住人になれる、といった話だ。 俺は、二つ返事でその話に乗り、天国の門に向かい走り始めた。
天国への、地獄ロードを走り始めた…。
つづく。