一週間後、一安のお母さんが弟の家から帰宅した。
一安のお母さんは京都で買ってきたお土産を、私にご馳走してくれた。
その頃私は、もう悪阻が始まっていた。
だが誰にも気付かれない為に、無理矢理口に押し込んだ。
一安のお母さんが帰って来た次の夜。
その日一安は機嫌が良かった。
妊娠を報告するなら、今だと思った。
もうすぐ寝ようと、私と一安は布団に入った。
「一安?」
私は不安を抱えながら、一安の名前を呼んだ。
「なに?」
妊娠に気付いていない一安。
「あゆ、妊娠してる」
心臓の鼓動が早くなる。
「は?」
一安は信じられない様子だった。
「妊娠してたみたい」
私は、繰り返し伝えた。
「お前、それ嘘だったらホントに、俺の事馬鹿にしてる事になるよ」
一安はびっくりしたのか、言葉の意味がよくわからない。
「嘘じゃない」
私がそう言うと、一安はそのまま寝てしまった。
私はいつもなら解るはずの、一安の表情を読み取れなかった。
でも何となく、明日がいい日にならない事は解った。