中学を卒業する頃に遼一に転機が訪れた。
公立高校の受験に失敗したのだ。当然の結果だ。
遼一は何とも思ってなかったが、両親にとっては経済的に痛手だった。
「愚連隊を気取って、意気がっていても、お前はその程度の男か…?」
今まで、無口で優しかった父親に言われた言葉が強烈に胸に突き刺さった。
周りを見てみると親友達は、自分のやりたい事を見つけ、その為に工業高校や商業高校を受験し合格していた。
遼一は将来の事などまるで考えてなかった。
だから近所の公立高校の普通科を受けたのだ。滑り止めの私立も普通科だった。
毎日が楽しく、精一杯生きた為に将来の事など考えられなかった。
仕方なく通う事になった私立高校は、バカみたいに校則が厳しく軍隊のようだった。
暴力以外の何物でもない、体育教師の体罰。
遼一は何もしていないのに何かにつけて殴られ蹴られ転がされた。
そうする事で他の生徒を牽制するのが担任の目的なのだろう。
悔しかった。毎日が嫌だった。ダサい制服、分厚いカバン。
駅では遼一の高校の生徒はいつも下を向いている。
他校の生徒に絡まれるのが怖いからだ。
そんな中、遼一だけは天を睨み付けるように視線を上げていた。
辞める訳にはいかない。
親父に対して申し訳ない。
高校なんて義務ではないのに、毎日朝から晩まで働いて通わせてくれている両親に申し訳ない。
何かに打ち込みたかった。
「勉強してみよう」唐突にそう思った。
親父に、やれば出来る事を証明したかった。
ツッパリ続ける生き方は疲れる。
でもそれが自分の生き方だと思う。
ツッパる相手が、学校や社会から自分自身へと変わった。