「来月合コンするから‥真琴、日にち空けとけよ。」
弘はあっさりと俺の出した条件をクリアした。
「じゃあ早速、真琴さぁ女装してもらおうか?」
弘はニヤリと笑って、押し入れの中の衣装ケースをごそごそしていた。
「これこれ。」
弘が出したのはあの日に着ていた衣装だった。
(おい、あれってたしか‥どこに行ったかわかんなくなった衣装じゃねえか。)
俺は弘に聞いてみた。
「なぁ、それ‥どうしたんだよ?」
「これか? 真琴が教室に忘れていったからもらったんだよ。」
「もらった?」
「だって卒業式には机の中の物、置き忘れたらダメじゃねえか。」
「まぁいいけどさ。」
「つべこべ言わず、これまた着て見せてよ?」
「わかったよ。 なんで俺がこんなことしなきゃなんないんだよ。」
「おい真琴、何か言ったか?」
弘はニヤニヤ笑いながらあの日の衣装、キャミソールにミニスカートを手渡された。
「わかった、着替えればいいんだろうが。」
俺はその場で服を脱ぎ始めた。
「ちょっと待て、ここで着替えるなよ。 あっちで着替えてこいよ。」
弘はトイレを指差した。
「はいはい。」
俺はその衣装を持ってトイレに入っていった。
「そうだ。 どうせ女装するんなら下着もこれに履き替えろよ。」
弘はトイレのドアを開けて、女モノのパンツを投げ入れた。
「ここまでさせるか?」
俺は嫌々着替えた。
久しぶりにする女装、なんか不思議な感覚があった。
着替え終わるとトイレから出てきた。
「んっ? それはヤバいな‥ちゃんとした方がいいかな?」
「なんだよ、見たかったんと違うんか?」
「あぁ、見たかったけどちょっと違うな。真琴‥明日までちゃんとムダ毛処理してこいよ。」
「明日まで?」
「あぁ、暇だろ? 明日デートしよう。」
「まぁ、暇だけどさぁ。明日デートするの?」
「じゃ、決まりだな。」
「この衣装、真琴に返すよ。 明日、別の衣装用意しておくから。」
俺は服を着替え、返してもらった衣装を持って弘の部屋を後にした。
弘は俺が帰った後、なにやら準備に取り掛かった。
「よし、これで完璧。」
俺は弘が明日のデートに何か企んでいるなんて知る由もなかった。
俺もまた弘に何か企んでいた。