翌日、俺は弘から電話があって約束した時間に部屋を訪れた。
「来たな、真琴。」
弘は不適な笑みを浮かべ俺を招き入れた。
「早速だがこれに着替えてくれ。」
渡されたのは比較的大人しめなスーツ系だった。
白いブラウスに濃紺のスーツ。スカートの丈が心なしか短めだったのが気にかかるだけ、しかもムダ毛を処理してこいって言った割りにはパンストまで用意してる。
「意外に普通だな。弘だけに変なコスプレさせられるかと思ったよ。」
「相手がコスプレなんか着たら恥ずかしいだろ?それに今日のお前のデートの相手は俺じゃねえよ。」
「 どういうことだよ、弘? お前じゃないって?」
「俺だと思ったか?」
「当然だろ。お前がしつこく言ってくるか仕方なしにするんだぜ。」
「わりぃな。お前の相手は俺の従兄だよ。もうじき来るから着替えて待ってろ。」
俺は着替え、母親から拝借したメイク道具で化粧していた。
「おっ、真琴‥本格的だな。」
俺は化粧しながら
(弘じゃないのか‥せっかくデートプラン考えてきたのに。)
しばらく経ってドアホンが鳴り響いた。
ピンポ〜ン♪
弘がドアを開けると、そこには30代の男がいて
「やぁ弘、今日は女を紹介してくれるって?」
弘よりニヤけた顔をしたその男に俺は紹介させられた。
「へぇ、可愛いじゃん。しかもセクシーだし。」
弘は俺の顔を見て、誇らしげに笑いかけると、
「紹介するよ勝さん、俺の同級生のマコト。今日はこいつからどうしても勝さんとデートがしたいっていうので‥。」
「えっ? 話が違うぞ弘。どうなってんだ?」
俺は弘の襟首を掴むと少し奥に引き込み、真意を問いただした。
「まぁ、いいじゃん。
お前の女装した写真を奴に見せたら一回デートさせろってうるさいんだよ。俺も同伴するから…」
その瞬間、俺は騙されたと思った。
と同時に俺の企みも消え失せたかのように思えた。
俺の企み、それは可哀想な弘のため、一日中彼女のフリをすることだ。
「なぁ真琴、お前今日一日中は女として振る舞え。奴にはお前は女として紹介してるから。」
「チッ、わかったよ。 そう振る舞えばいいんだろうが。」
「じゃあ、いってらっしゃい。」
弘は俺の背中を押し、部屋の外に出した。
こうして俺は弘の従兄・勝との危険なデートが始まった。