遼一は勉強など本格的にやった事などなかった。
とにかく教科書をひたすら読んだ。
がむしゃらに三年間勉強し、地元の大学に合格した。
それは遼一の父親の母校だった。
努力が実って嬉しかった。
しかし、遼一にとって受験は、それ自体が目的だったので実際のキャンパスライフは実に退屈だった。
世の中は空前の好景気。
いわゆるバブルで、周りは皆どこか壊れたように浮かれていた。
そんな中、遼一はいつも1人だった。
やはり、中学時代の親友達に比べると大学の連中は軽々しく感じたからだ。
週末に遼一の部屋に集まってくる中学時代の友人に比べたら、大学生はまるでガキだった。
週末だけが遼一の楽しみだった。
そして、バブルが弾けた。
遼一が就職活動する頃には就職氷河期と呼ばれるようになっていた。
たった数年で世の中こんなに変わるものか…。