相変わらず嫁は「私がもっと早く気付いていれば…」を連発して 喪主と言う名のヒロイン役を演じていた
そんな 俄かヒロインの嫁を見た 母親を中心とした親戚連中は あっちでコソコソ こっちでヒソヒソ嫁の悪口を言っていた
まあ これまで何回も離婚騒動起こしたから 俺の親族側からすれば 嫁憎しモードになるのはしかたないんだけど…
誰一人として 俺の死を悲しんでいないよなあ…
最愛のまりもはもちろんだけど 辛苦を共にした同僚や 朝まで騒いだ飲み友達なら 心の底から泣いてくれるだろう
みんな 俺が田舎からこっちに出てた来てからの8年間を支えてくれた かけがえのない人達だった
なのに 最後のお別れを社長のエゴのために阻止されたんだ
俺の人生は否定された
熱い炎に包まれながら 俺は涙を流した
その頃 まりもも涙を流していた
二人でよく行ったコンビニの駐車場で空を見上げて泣いていた
俺の涙が雨になって まりもを濡らした
まりもが風邪ひいてしまうかも知れないのに 俺はまりもを抱いているが如く 雨を降らせ続けた
ようやく 雨が止んだ頃
まりもは精一杯の笑顔で
「ひろあきありがとう」と言った
俺の知らない笑顔だった
笑顔と呼ぶには あまりにも辛く苦しい表情だった
今まで俺を元気づけてくれたのは、まりもの笑顔だった
3年前の桜の季節…
笑顔のない家庭に疲れ切っていた俺の前に まりもは現れた