心鬼…簡単に言えば侍だ …。ただ、違うのは普通の侍のように身体の外から斬るのではなく、中…つまり心から斬るのだ。心から斬られた者は血も流さず、声もあげずに死す。
彼らは、邪心を持つ者しか狙わず、斬らない。そんな心鬼を江戸に住む人々はとても良く評価していた。
だが、483年前…。村人達の態度が…一変した…。
「心鬼を皆殺しにしろ!!」
「心鬼のものには容赦するな!たとえ、子供でもだ!」
ひょんな事から、心鬼の最大の秘密が江戸中に知れ渡り、村人達は激しく心鬼を追いやった。
一人の若い男性が布で包まれた何かをしっかり抱えながら、夜の林の中を懸命に走っていた。その人の後には村人が数人追い掛けていた。
「待てー!」
「その赤子ごと殺せー!!」
男性は村人の様子を見ながらただひたすらに林の中を走り続ける。男性は一つの大きな岩を見つけてその後へ隠れた。村人が剣幕な顔をしながら岩を通りすぎた事を確認して、林の奥へ駆け出した。そこにあったのは、沢山の祠に囲まれた寺だった。男性は村人が来ない事を念のため確認をしてからそっと中へ入った。
「玄田(げんた)さん。」
18位の歳の青年が男性にきずき、よびかけた。
「おぉ、拓。準備は?」
「大丈夫。いつでもいいですよ。」
拓 と名乗る青年は近づきながら答える。
「…そうか…早くしよう…村人達が…。」
言い終わらないうちに拓はたずねた。
「まさか…ここに…?」
玄田と名乗る男は思い詰めた顔をして頷いた。そして、布の隙間から包んでいる何かをみながら呟くように答えた。
「ただ…この子…私と麗奈の子供だけは…。」
そして、寺の中心に拓を立たせ、布の包みを渡した。
「いいか?この子の名前は…今日から、麗(うるは)だ。」
「麗?」
首を傾げる青年に、玄田は頷く。腰からぶら下げてる小さな細長い物を渡し、
「これを、麗に…。」
と言って青年に渡し、そそくさと離れ唱える。
「心鬼として、時に命じる!彼らを483年後の未来へ!!」
言い忘れてたが心鬼には中から人を斬る他に、何かに命令をだして操ることも可能なのだ。そして、青年が飛ばされたと同時に固く閉ざした筈の寺の扉が開いた。
「…麗…。」
娘の名前を呟き、玄田は他の心鬼と同じ結末を迎えた。