彼のフルネームは『久野(くの)諷哉』。
彼が麗の事を知ったのは半年前。
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麗が、邪心を持つ人相手にあの日玄田が残した小さな細長い物を取り出し唱える。
「心鬼として、血を浴びし刀に命じる。罪を犯し反省せぬ者の魂を斬りたまえ。」
すると細長い物が刀身が真っ赤な刀になり、麗はそれを邪心を持つ者に向ける。そして、ザンッと刀を振り下ろす。斬られた者達は血も声も出さず、ぱたりと倒れ伏した。
「反省する気のない哀れな魂は…生きる資格なし。」
麗がそう言い残した直後 だった…。麗はハッと近くにいた男性にやっと気づいた。それが諷哉だ。
麗は茫然と彼を見ていたが、口を開く。
「ここで見た事は言わないでよ?さもないと、斬るよ?」
その脅しに諷哉は激しく何度も首を縦に振った。
そこから、なんやかんやでよく話すようになった…。
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「そういや、おまえ 『罪を反省しない奴は生きる資格なし』って言ってたが…反省する奴は?」
「…なんで反省するやつも斬らなきゃいけないんだ?…そういう時はほっとくよ…。」
物静かに麗は答える。でも… と麗は遠くを見るように答える。
「この時代は…刀を休めた事がない…四六時中斬った事しかない…。…諷哉…私の時代では、邪心を持つ者はホントに少なかった。でも、そのかわり、食べ物は簡単に不足してしまい、子供が飢える事もあったって拓じぃが言ってた…。」
諷哉は黙って麗の言葉に耳を傾けた。
「でも…この時代は…食べ物も豊富で凄く豊かな時代だ…。なのに…なんで悪事をわざわざ働くんだ…?」
諷哉は何も言えなかった。麗のいうことは最もだからだ…。現代は、昔と比べたら便利だし、食べたい物を食べたい時に食べれる。なのに、なかには…カツアゲやら、詐欺やら、殺人やら…数えだしたらキリがないほど、悪事が絶えない…。
麗にとって、これはショックなのかもしれない…。
「…いくぞ…遅刻する……。」
諷哉はそう言って麗をさとすしか出来なかった。
麗は、無言で無表情のまま歩いた。
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放課後。麗と諷哉が歩いて帰った時、突然、麗が立ち止まった。
「…ごめん…先帰ってて。」
麗がそういうのは決まっている…。諷哉は頷いて
「…成敗だろ?」
と答えた。麗は頷いて走り去った。