俺の生家は 親父が旧家の長男である上に 家の敷地内で会社を経営していたから 物心つくころから「俺は跡取り息子」の認識が強かった
恋愛と結婚は別物だ
頭では分かっていたけど
やっぱり 好きになった人と一緒になりたい気持ちが強かった若い頃もあった
だけど 結果として一人の女の子を泣かしてしまった
親のダメ出しに負けてしまった
大好きな女の子と別れた後も 女性には不自由しなかった
時はバブル全盛期
金が全て 消費が美徳のこの時代にフェラーリに乗っていて 父親が社長とくれば 多少見た目悪くても女性は近づいてきた
だけど 俺は覚めていた
ヤツらは 俺の事が好きな訳じゃない
俺の金が好きなんだ
俺の家が好きなんだ
おねだりもされたし 気前よく買ってあげた
毎晩のように万札を使い
女を抱いていた
そうこうしてる内に 俺も30になり 親や姉から「いい加減に落ち着け!」と言われ続けていた
嫁は 毎晩抱いた女性の一人だったが 他の女性に比べて地味だったしおとなしかった
おとなしい女性なら 気の強い俺の母親と揉めることもないだろう
俺の思惑通り 母親は大賛成で 嫁も玉の輿に乗れたから大喜び
それから間もなく結婚したが 親父の会社が苦しくなった頃から嫁の態度が変わり始めた
ガキが出来たら変わるかなと期待したけど もっと悪くなった
地味で控え目に見えたけど玉の輿狙いのために牙を隠していたんだ
攻撃的な性格故に ママ友も出来ず ガキは情緒不安定…
まりもに出会わなければ 俺は高い塀の向こうにいたかも知れない
それぐらい追い詰められていた