子供のセカイ。4

アンヌ  2009-03-26投稿
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その日の帰り道は、美香たち姉妹に耕太がくっついてきた。
「……何か用なの?」
「は、別にいいだろ、一緒に帰ったって。」
耕太は嫌そうに顔をしかめる美香の隣を平気で歩く。舞子は前をちょろちょろしては、道端にしゃがみこんで花をつんだり、石ころを蹴とばしたりしていた。
「舞子、石を車道に置いたままにしないで。車が迷惑するでしょ。」
「べー!」
舞子は舌を出すと、タタッと走っていってしまう。
美香はため息を吐いて石を拾うと、近くの空き地に放った。
ここは田舎だから、視界に見えるのは家より田畑の割合の方が多い。
視界が開けていて、舞子の後ろ姿を見失う心配もなかったから、わざわざ呼び戻したりはしなかった。“子供のセカイ”を開けば、すぐにわかる。
それでも注意して舞子を見ている美香に、耕太が話しかけた。
「なぁ、舞子の“子供のセカイ”は、どうして実体化するんだろうな?」
美香はちらりと耕太を見て、小さく呟いた。
「知らないわよ、そんなこと。」
「だっておかしいだろ。本来子供の自由な想像からできるはずの“子供のセカイ”が、現実になるなんてさ……」
「正確には現実になるわけじゃないわ。大人には見えないし、危害も加えられない。見えるのも触れるのも子供だけよ。」
「危険なのは同じだろ」
「まぁね。」
耕太は気まぐれに畑に落ちていた小枝を拾うと、一回振って剣に変えた。昨日美香が出したものよりも、もっと精巧に作られている。やはり男の子だから、美香より剣に関して知識があるのだろう。
耕太は剣を眺めながら言った。
「舞子の“子供のセカイ”はさ、本物になるけど、オレたちみたいな想像だけの“子供のセカイ”でも戦えるんだろ?」
「じゃなきゃ私、とっくに死んでるわ。」
「……いちいち絡むなよな。せっかくオレが加勢してやろうと思ったのに。」
美香の胸に怒りがわき上がった。感情のままに耕太を睨むと、耕太はびくりと肩を上げた。
「な、なんだよ。」
「……別に。」
耕太は何もわかってない――。美香は苦々しく考えた。そんなに簡単に立ち向かえるほど、舞子の作り出す“子供のセカイ”は、甘くない。

そう、私がどんなに頑張ったって――。

美香は暗い物思いにふけってしまい、そのせいで舞子が消えていることに全然気づかなかった……。



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